「全ファミ。」ブログ編

SNAKE RATTLE N ROLE ~ロックなリズムで玉を食え!~

必然のクォータービュー 
 ファミコンは処理の都合上、キャラクターなどを表示するスプライトを5個以上横に並べて同時に表示することができない。5個以上並べるとチラついたり、表示されなくなる。ファミっ子なら少なくとも一度くらいは経験しているだろう。話変わって、本作の主人公は体がボールで出来ているヘビだ。意味がわからないだろうけれども取りあえず読み続けてほしい。胴体を構成するボールは最大で5個。そのため、頭とボールが横に5個並ぶと体や頭がチラついてしまう。そうなると見づらいことこの上ないし、ゲームにならない。そこで、本作はクォータービューを採用しているのだと思う。前回取り上げた『エイセス・アイアンイーグルⅢ』は、クォータービューが持つゲーム的な要素を見事なまでにゲーム内部へと取り込んでいた。翻って『SNAKE RATTLE N ROLE』は、クォータービューでないと表現することの出来ないゲームなのだ。

正直者はレアを見る
 本題へと入る前に、このカセットを見てほしい。NES(Nintendo Entaertainment System)なので形がファミコンと違うが、それはともかく絵だ。体がボールで出来ているのはわかるだろうが、この絵を見てこのゲームを買う気になりますか? 縁あってこのカセットを知人から購入したのだが、正直言って面白そうにはまるで見えなかった。でもねー、ビビっときたわけよ。これはもしかしてものすごく面白いんじゃないか? 
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愛嬌のある顔と姿はしてるんだよ。でもヘビだからなあ。ま、それはさておき、NES用ソフトも集めようと思ったのはこのソフトの存在が大きかった。ファミコンのまだ見ぬ名作が海外に眠ってたっていう衝撃もあったよ。

 で、やってみたら本当に面白くて感動した。ファミコンのゲームとモノが違っていたのだ。ゲームセンス、細かいところの作り込み、バランス調整、どれもこれも頭ひとつ……いや、ボール2つは突き抜けていた。実はこれ、RARE(レア)社が制作していたゲームだったのだ。レアといえば『バトルトード』、スーパーファミコンの『ドンキーコング』、ニンテンドー64の『ゴールデンアイ 007』あたりの傑作を作りあげたゲーム開発会社だが、実はNESでもゲームを作っていたのだ。本作以外にもレア謹製の傑作NESゲーがかなりあるけれども、ファミコンに移植されたゲームは少ししかない。そんなわけで、本作はファミコンを質に入れてでも買うべきスーパーナイスな逸品なのだ。ついでにゲーム動画もちょっとアップしてみたので、購入時の参考にしてもらえれば嬉しい限り。



捕食するは我にあり
 本作の見どころは山ほどあるが、ゲーム性の本質部分であるボールを食べる話をしよう。ゲームスタート時、主人公は胴体にボール1つがくっついた姿で登場する。その後、ステージに登場してくるボールを食べると、そのボールが胴体の一部になるのだ。このボールは同時にいくつも登場し、転がりながら四方八方に動き回る。なので、それを追いかけて食べていだが、この捕食行為がめっちゃ楽しいのだ。ボールの動きを読み、待ち伏せし、先回りし、追いかけまくって、舌を伸ばして食べまくる。追いかけて捕まえて食べるという行為は、現実に食べていない状態であっても大脳皮質から何か興奮するような物質を出しまくるんだろう。そうでなければこの面白さは説明できないような気がする。

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画面上部にある双頭デュークボックスみたいな装置がボールを定期的に吐き出す。敵のいないボーナスステージではボールの追いかけっこが存分にできる。食べて食べて食べまくってアドレナリンを分泌しまくれ!

 こういった単純明快な要素と操作だけで構成されているゲームを「動詞ゲーム」と呼んだのはライターの多根さんだが、本作の捕食部分に関してはまさに動詞ゲームの面目躍如だと言える。そして、そういうゲームの基礎部分がどうしようもなく楽しい作品は、ほとんど例外なく名作と呼ばれるゲームなのだ。
 ちなみに、ステージクリアするとボールをいくつ食べたかがボールのグラフィックで表示される。このボール1つ1つが得点に加算されるわけだ。この加算のされかたというのがまた実によくて、ボールの得点が現在の総得点に加算され、総得点が増えていく際、「トゥルルルルル」という効果音が鳴る。この効果音は最初は低音なんだが、ボール捕食で得た得点が多ければ多いほど(総得点に加算される時間が長ければ長いほど)、その効果音がどんどん高くなっていくのだ。低音から高音へと徐々に上がる音階がまた脳を刺激するわけ。どんだけ脳を興奮状態に持っていくんだよ!

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体重計。胴体の重さが足りないと右隣に見えるゴールの扉が開かない仕組み。任天堂の宮本さんは「体重計を見るのは楽しい」と言ってWiiFitを作ったが、この体重計に乗るのもやっぱり楽しかったりする。レアの先見の明にはまったく恐れ入る。

 だから、どこまで高音になるのだろうと思って、ステージ1で制限時間ぎりぎりまでボールを捕食しまくってみた。そしたら、かなり高い音まで達した後に……この先は自分で確かめてみて。関心して納得するから。ただ、またも脳が心地よい状態になってしまったのは確かなのだ。効果音1つでここまで語れるゲームはさほど多くないよ、ほんとに(『ロマサガ2』の技ひらめきくらいか)。効果音のことを知って以来、ステージ1と2では必ず制限時間ぎりぎりまでボールを捕食しまくるようになってしまった。原稿を書くのにはまったく関係ないのに、だ。

 とにかくゲームの1つ1つの要素が脳を刺激し興奮させまくるので、名作というよりも何度も何度もやりまくってしまうヤバイ代物と言えるかもしれない。ああ、ゲーム脳というなら言えばいいさね! 
 効果音に関連してBGMのことも書いてしまおう。主人公の蛇は2匹いて、RATTLEとROLE。タイトルにもその名前が入っていて、おそらくはというか間違いなくロックンロールをもじっていると思う。というのは、ゲーム内のBGMがどう聞いてもロケンロォルだからだ! 白いひらひらのついた服を身にまとったスーパースターが歌ってるアレだ。特にステージ4で初登場する音楽は本当にノリノリで、その音楽が聞きたいがためにプレイしていると言っても過言でないくらいだ。全体的にとてもリズミカルで、ボールを追うのがさらに楽しくなってしまう。タイムアップ間近やボーナスステージではBGMが倍速になったりして、興奮と緊張のあまりトイレが近くなってしまいそうだ。

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STARRING。こいつらは星がキラめくロックスターなんだぜ!

ボール! ボール!! ボォォォォル!!
 捕食対象となるボールだが、青、オレンジ、黄色と3色あって、どんどん素早くなっていくのは定番だろう。最初は単に転がって逃げ回るだけだが、ステージが進むごとに進化していく。ステージ2ではボールにバネがついて跳ね回り、ステージ3では足が生えて小回りがきくようになり、ちょこまか走り回りながら段差を降りるようになる。一転して次のステージだと跳ねまくって地面に着地した途端、ボールが溶けるんだよ! 溶けたボールは捕食できないから、またボールに戻るのを待つしかないわけだ。黄色ボールが溶けてまた戻る様子は、まるで動画の高速巻き戻しで割れた水風船が元に戻るみたいな感じだったりする。制作者はちゃんと面白いことをしているという意識があって、その面白さが実際にプレイヤーに伝わっているのがすごいのだ。

 で、ステージ5ではついにボールが空を飛ぶ。羽が生えて優雅に宙へ舞い上がるって、どんなボールなんだよ! 軌道がまた美しく、螺旋を描くように飛んで舞い降りてくるわけだ。凡百のゲームなら単なるボールのままだろう。サービス精神がすばらしいというだけでなく、発想そのものが優れているのだ。これで89年の発売なのだから、本当にすごすぎる。
 ところで、蛇が獲物を丸呑みして腹がふくれる様子を映像などで見たことがあると思う。主人公蛇のRATTLEは腹がふくれない代わりに、まるでボールを飲み込んでいくかように胴体がうねり、胴体を構成するボールの色が変化していく。これがどう見ても食べているように見えてしまうのだ。このように、本作は細かいところでの演出も徹底している。ボールを食べた後、ペッという風にボールの残骸を吐き出すのだが、食べたボールの種類によって吐き出すものが違うのだ。

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ボールは跳ねるのにあえてバネを取り付けるセンスがたまらん

 これ、「NESなんだから記号でいいじゃん」という風に考えなかったんだろうなあ。レア社のみならず、海外のゲームクリエイターは「リアル」というところをファミコン(NES)時代から追求しているのだ。といってもファミコンでは処理能力的に不可能なことも多々あり、そのためにかえっておかしく見えるゲームも多い(味にはなっているけれど)。ただ、そのリアルさを追求し続けたことで、PS3やXBOX360などのHD機でリアル感あふれるゲームを作ることができるようになったのだと思っている。

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べちょっという音が聞こえてきそうだ。とろけるボールは○印

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空を舞うボール。何という幻想的な光景……なわけないだろ! だがそれがいい

 話が逸れたけれども、レア社がなおさらに優れているのは「ゲームをさらに気持ちよくする演出」という点にも気を使っているところだ。本作で言えば、Bボタンで舌を伸ばす時、実はちょっとだけ宙に浮く。ほら、ライブとかで興奮して観客が飛び跳ねるじゃん、あんな具合。ロケンロールなBGMとあいまって操作が実に心地よいのだが、単に気持ちよいだけでなく、これも実はちょっとしたリアルなのだ。本作にはマンホールのフタが設置されていて、その上で飛び跳ねる(=舌を伸ばす)とボールやら敵やらアイテムやらがマンホールから飛び出してくる。いちいちマンホールのフタを開けるというアクションをせず、飛び跳ねてフタを外す。これをロックと言わずしてどうする! なおかつ、ボールであれば、Bボタン連打で捕食できてしまう。この即食いが実に気持ちいいのだ。
 ついでにもう1つ、マンホールからデカイ足が出てくる場所がある。コイツを舌の連射で攻撃すると、ものすごい勢いで点数が入り、その点数の入ってくる様子を目で確認できるのだ。これがまた気持ちよくてねぇ。格闘ゲームでいうところの連続攻撃(コンボ)というやつで、まったくもって気持ちよさがあふれまくりのゲームなのだ。

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まんま足。倒した時の見返りは大きく、1upアイテムを落としてくれる。でも後半ステージはこっちを踏み潰そうと大暴れしてくるけどな。遠くで聞こえる足音が怖すぎ

クォータービューのかなたへ
 本作はステージ6から捕食対象のボールが出てこなくなる。代わりに待っているのは高難易度の登頂アクションだ。障害物やアイデアに満ちあふれた仕掛けをくぐり抜け、クォータービューの見た目どおりに画面上へ上へ登っていく……かと思いきや、断崖絶壁風味の狭い場所を敵に追い立てられながら逃げくだるステージなんかもあったりする。
 遠慮も手加減もまったくない、でも難易度上昇カープは憎らしいまでに完璧な出来具合なのだ。水が流れ落ちるステージでは流されまいとすべく左手親指に力が入りまくりだし、最終盤に登場する氷ステージの難易度は絶叫しまくるけれどもな!
 それでいて、蛇の滝登りというような非現実的というか思いつくことさえ難しいシチュエーションも用意されている。クォータービューならではの見た目とあいまって、滝登りのシーンは衝撃的でさえあるのだ。
 こんなに面白いゲームがファミコンで遊べて、なおかつ日本未発売というのがつくづく信じられない。海外ゲーム専門の通販ショップさんなどをチェックして、なんとしてでも入手してほしい(※)。手間ひまをかけた分以上の興奮と面白さが、本作には存在している。

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垂直に流れ落ちる水をまっすぐに登っていくヘビ。実にかっこいいんだが、登り切って直後に罠を仕掛けるのがレアクオリティ。1upをエサにしてくるもんなぁ。最高だ



※ファミコンでNESカセットを遊ぶには、NES本体かコンバート用アダプターが必要です。アダプターは任天堂のライセンス商品ではありません。


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至高のクォータービュー
 のっけからカミングアウトしてしまうが、見下ろし型や横スクロールのシューティングにはあまり魅力を感じない。ただ、なぜかクォータビュー(斜め視点)のシューティングを見るとむずむずしてきて、それがどんな出来栄えのゲームであっても好きにならずにいられなかったりする。クォータビューのシューティングは数が少ないので、実はそれだけでときめきを覚えてしまうのかもしれない。 そういったマニアックな嗜好を差し置いても、本作はクォータービューが持つゲーム性を見事にゲーム化している。面白さと悔しさのあまり、ゲーム中に絶叫したくらいだ(ゲーム中にうるさいのはいつもだが)。かつて別のクォータービューシューティングでも同じことを書いたが、クォータービューのシューティングが好きな人は今すぐ本作を購入していい。そうでない人には、当コーナーに少しだけお付き合いしていただこう。

前菜はFPS
 クォータービュークォータービューと連呼しているが、本作はそれだけのゲームではない。まずFPS(自分視点)で敵の戦闘機とドッグファイトする面があって、そこで敵を一定数撃破するとクォータービューのステージに行けるようになっている。
 実はこの面もなかなかいい具合なのだ。敵の戦闘機からロックオンされて誘導ミサイルを打ち込まれた時の、生命の危険を伝える甲高い人工音声。喉がカラカラになるような緊迫感と、誘導ミサイルをチャフ(誘導ミサイルを妨害するための防御兵器)で振り切った時の安堵感。言うまでもなく最高だ。ゲーム開始当初は敵機撃破のたびに拳を握ったりするのだが、そのうち冷静なベテラン飛行士のような気分になってくるのもいい。敵を倒した時にちょっとだけ出てくるアイテムもいい味を出していたりする。
 なかでも楽しいのがミサイルでの敵戦闘機撃破。最初は敵追尾能力が低いミサイルしかなく、慣れるまではちょっとだけ苦労する。だが、先のステージに進むと、敵戦闘機を一撃で破壊するレーザー兵器や炸裂兵器、さらには敵戦闘機を撃破するまで追い続ける究極誘導ミサイルだの、非実在兵器が山盛りで登場してくるのだ。
 こんなに盛りだくさんの内容ではあるが、FPS面はあくまでもメインディッシュ前の前菜なのだ。クォータービュー面での標的や敵兵器の多彩さに比べ、FPS面の敵は1種類の戦闘機だけしか登場しない。それがなによりの証と言えるだろう。
 しかし、前菜には前菜なりの役割がある。FPS面における自機のダメージや弾倉は、本作のメインであるクォータビュー面に引き継がれる。だから、プレイヤーは「なるべくノーダメージ&弾を残したい」と考えることになる。わかっていないゲームの場合、やたらと前菜の難易度をあげてしまい、メインディッシュ前にプレイヤーを疲れさせてしまう。
 しかし、当然のように本作のFPS面は難易度が控えめに調整され、誘導ミサイルをはじめとする搭載兵器が実に強力な設定になっている。これにより、プレイヤーはストレスなくメインディッシュを味わえるのだ。この「遊ぶ側の心理をわかっている感」が最高だ。

メインディッシュでイェアー
 さて、FPS面を突破するといよいよメインのクォータービューである。
 で、本題に入る前に質問。縦画面や横画面のシューティングとクォータービュー画面の明確な違いは何でしょうか。
「クォータービューだけがカタカナ!」
 おいしい答ですが違います。当コーナー的に望ましい正解は「高低(立体感)があること」。縦画面にせよ横画面にせよ、空間を二次元の世界に切り取った平面的な画面構成である。高低もしくは奥行きはゲーム性から切り離されてしまい、せいぜい演出に使われる程度なのだ。縦画面では地上専用攻撃とかあるけれども、メインのゲームはあくまでも平面上で展開されていく。
 そこで本作のクォータービューである。この斜め視点のステージでは、地上物を攻撃することがメインになっている。ここでポイントなのは「地上物に高さと耐久力がある」ことだ。地上物を破壊する前に自機が地上物に激突すれば、もちろん自機は大破する。ちなみに、本作は自機が大破すればミッション失敗となり、再びFPS面からスタートになる。よって、地上物の高さを把握するのはとても重要なのだ。特に手ごわいのが電波発信用の鉄塔。他の地上物と違い、こやつはかなり「高い」のだ。そのため、気をつけないとあっという間に激突する。気をつけていても激突する。っていうかしたんだよ、何回も! この手痛い経験から得たものは、本作は高さにちゃんと意味を持たせているんだなぁという感想でした。
 さておき、自機の高さを調整しながら目標の地上物へと向かい、機銃で銃撃したり爆撃したりする。ここでもう1つのポイント、「地上物の耐久力」について話を進めよう。
 地上物に機銃を当てるには、基本的にものすごく接近するか逆に遠くから撃つかの2種類しかない。本作の機銃は基本的に斜め下を向いていて、機銃の弾も斜め下へ飛んでいく。ただ、遠くからの銃撃だと地上物に当てるのが難しいし、適当に撃っているような感じがしてあまり面白くないのだ。そのため、本作で地上物を壊す時はたいてい至近距離まで近づくことになる。この距離感が絶妙な調整になっていて、「あーいま自分は地上物を狙い撃ちにして壊しちゃってるぜ、うっへへへ」というシューティングハイみたいな感覚を味わえるのだ。
 しかも、嬉しいことにその感覚は何回も味わえる。地上物には耐久度が設定されていて、ちょっと弾を当てたくらいじゃ本作の地上物は壊れないからだ。壊せなかった地上物を上昇か左右への迂回で避け、大きく回りこみながら目標の地上物へ再び近づいていく。目標にたどりつくのにいったん離れ、さらに旋回して戻ってこなければならないというじれったさ。自機を旋回させるための十字ボタン操作にも力が入ってしまう。これは縦や横画面の強制スクロールシューティングでは絶対にありえない。ゲーム性の根本から違っちゃっているのだ。旋回しつつ上下に機体を振っちゃったりするのも楽しいし、本来の目標に戻らず離れた位置にある目標を破壊するのも最高だ。まさにクォータービューかつ任意スクロールシューティングならではのゲーム性である。うまいこと地上物を配置して、プレイヤーの心をあおりまくりなのだ。 
 しかも、本作の制作者はさらにプレイヤーを煽情的にさせる仕掛けを用意していた。地上物を壊した時、自機の耐久度やエネルギーを回復したり、ミサイルの弾数を戻してくれるアイテムをぽわっと出現させるのだ。場所は破壊した地上物の真上あたり。そのアイテムを取るにも、再び旋回して地上物があった壱に戻ってこなければならないのだ。さらに、そのアイテムはふわふわと飛んでいるため、取り逃がしたりすることもある。アイテムはだいたい旋回を2回する時間で消えてしまう。それゆえ、消える前に何としても取らなければ! という意気込みと、アイテムからさえも離れなければならないじれったさが入り交じり、もうなんというかさんざんじらされてしまうのである。散々じらされたあとのアイテム取得が嬉しいのは言うまでもない。本作の制作者は本当にじらし上手なのだ。

基地から森から港まで
 目標の地上物へ近づくまでに、トーチカや高射砲といった地上兵器やトラックや戦車がどかどか攻撃を浴びせてくる。さらにFPS面でドッグファイトを繰り広げた戦闘機や、戦闘ヘリなんかも自機へ襲いかかってくるわけだ。やっぱ敵だらけの戦場に単機突入って最高だよねッ! 
 もちろん地上物へ近づく時だけでなくまわりこむ時も襲撃されるわけだが、それらに加えて壊さなくてもいい地上物も登場してくる。その地上物がまた厄介で、目標の地上物のまわりを取り囲むように配置されているのだ。よって、安直に地面近くを飛ぶと余計な地上物に激突してしまう。目標までは一定の高度を保ち、目標を見つけたら急降下攻撃! そのうち目標と関係ない地上物も攻撃しはじめたりすれば、すっかりあなたもエイセスジャンキーである。 
 地上物地上物と散々書いているけれども、海が舞台の面もある。港の撃破から始まって、補給船、巡視船、そして空母と、目標がどんどんパワーアップ! 目標の守りもボリュームアップ! おまけにゲーム全体の面も種類も山ほどあって、飽きることなく目標撃破にいそしめてしまうのだ。
 奥行き、高さ、飛翔感。破壊に回避、緊張と緩和。クォータービューを構成する要素すべてが見事に調整された逸品だ。目標の地上物を破壊すると「ヒャッハー」という人工音声が流れる。地上物を壊しまくって、みんなも一緒に歓声をあげまくろう。破壊工作って最高だぜ! イェアー!

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ギャラクシアン ~狙い撃つことにこそ意義がある~

居合い撃ちとの出会い
 居合い撃ち。
 敵の至近距離から弾を発射し、一発も外すことなく敵を撃墜する――。
 居合い撃ちは『ギャラクシアン』のプレイ中にひらめいた射撃術のことである。命名者は居合い撃ちの開祖である自分。ネーミングの元ネタは日本刀の抜刀術である居合い斬りだ。鞘から抜刀する様子を見せることなく、一瞬にして敵を斬る。その居合い斬りを弾でやってみようというマニアックプレイである。
 この居合い撃ちをひらめいたのは、何の気なしにゲームボーイ版『ギャラクシアン』を電車内でプレイしていた時。「敵をぎりぎりまで引き付けて撃つのって、何かわからんけど面白い!」ってな具合だったのだ。
 ただ、居合い撃ちにハマりはしたけれど、居合い撃ちがなぜ面白いのかなんて、考えることすらなかった。自分はゲーム制作者じゃないから、ゲームの面白さを分析する必要はない。人に語る必要もなかったから、面白さの理由を突き止めることもなかったわけだ。




たった3機のデモンストレーション
 それから時は流れ、『ギャラクシアン』1面の敵すべてを居合い撃ちで倒さなければならなくなった。当時、ゲームサイドで連載していた「全てはファミコンのために。」のWEB企画として、『ギャラクシアン』居合い撃ちの成功動画をサイトにアップすることになったのだ。
 ゲームボーイ版での居合い撃ちは、正直に言って単なる暇つぶしだった。途中で居合い撃ちに失敗してもそのまま続けていたし、実際のところ敵全滅に成功したこともなかったように思う。
 しかし、今度は動画として最初から最後まで成功したプレイを撮影しなければならないのだ。プレッシャーは大きかった。
 居合い撃ちのコツは敵の動きをつかみ、コントロールすることだ。しかし、それを分かっていてもままならない敵の猛攻、そして、自分の技量のなさ。一撃を外してはやりなおし、敵の体当たりを受けてはリセット。その繰り返しの中で、敵があることをしていることに気がついたのだ。
 それがデモンストレーションである。
 手元にファミコン版『ギャラクシアン』がある人は、とりあえず起動してゲームをスタートしてみよう。ゲームのない人は居合い撃ち動画を見てくれてもいい。
 スタートすると、1機の敵が自機に向かって緩やかな弧を描くように飛来してくる。自機は左右に動かさず、ゲーム開始直後の位置においておく。すると、敵は自機のぎりぎり前を通り過ぎていくのだ。
 そのぎりぎり具合は、まさしく目と鼻の先。まるで計ったかのよう。というよりも、実際に計っているのだ。制作者が、敵の動きをプレイヤーに教えるために。
敵は弧を描くように飛来しますが、無駄な動きをしなくても倒せますよ
 自機をかすめるぎりぎりの飛来は2機続く。その間はレバーを触る必要すらないのだ。ただ単に、目前に飛んでくる敵を居合い撃ちで撃墜していけばよい。だが、飛来する3機目は、ほんの少しだけ横にずれて撃たないと倒すことが出来ない! 開始直後のたった数機の動きだけで、プレイヤーに『ギャラクシアン』の本質を教えてくれるのだ。何と美しく、ムダのないゲームデザインなのだろう。
 そもそも、『ギャラクシアン』は左右に動くのみの自機を操作し、一発ずつの弾で敵を倒すというシンプルなゲームシステムである。凡百のゲームであれば、いきなり敵が襲ってきてそれを撃破するだけの内容になっているだろう。しかし、非凡なる『ギャラクシアン』は、シンプルとしか思えないゲームシステムの中にさえ、デモンストレーションをさりげなく盛り込んでいるのだ。当時のプレイヤーは、意識したにせよしないにせよ、敵の動きを体で覚えたことだろう。私と同じような感動を覚えたプレイヤーもいたかもしれない。そして、その動きやゲームの本質に心を奪われ、プレイを重ねたことだろう。
 『ギャラクシアン』は元々アーケードゲームだから、プレイヤーに次々とお金を入れさせなければならない。それゆえ、ゲーム内容にメリハリをつけ、プレイヤーがどこで死んでもまた遊びたくなるような気持ちにさせる必要があるのだ。そこで、まずは撃墜しやすくわかりやすい動きをする3機を用意したのだろう。私にとっても2機の効果は絶大だった。ファミコンでのプレイであっても何度も繰り返して挑戦したくなったし、かつまた、自機を動かさずに敵を倒せるということに興奮と感動を覚えたのだ。ゲームボーイ版にハマっていたのも、多分デモ飛行をする3機のおかげだろう。
 少し話はずれる。ゲームによっては、ゲーム開始後にテキストによるシステム解説をしてくれるものもある。そのテキストには工夫がなされ、よく練られているものも多い。けれども、私にはゲームの説明を読むということ自体がもう苦痛でたまらないのだ。ゲームくらい自分の好きに遊ばせてくれ。押しつけがましく長ったらしい説明はいらないんだ。わからなきゃわからないで、そのわからなさを楽しむ。たとえシステムがわかりにくくても文句は言わない。だからほっといてくれ。

狙い撃ちするということ
 『ギャラクシアン』の面白さは狙い撃ちにある。
 ……などと書くと、当ページを読んでいるようなコアでディープなゲーマーが、「コイツは何を今さらなことを言ってるんだ。そんなこた189も承知だろ! ちなみに189は『三国志Ⅱ』シナリオ2の開始年な。ちなみに俺は呂布でしかプレイしないぜ」などと私みたいなことを言い出したりするだろうが、それでも書きたいことがある。『ギャラクシアン』は、ゲーム中のあらゆる要素が狙い撃ちをより面白くするために用意され、調整されているのだ。誇張ではなく、本当にあらゆる要素である。それゆえ、アイデアや調整不足のゲームのような、「ここがもっと練りこまれていればいいのに」とか「もっとここを遊ばせてほしい」とか「ここがいらない」とか、そういう不平不満がまるでない。プレイヤーが狙い撃ちに没頭するための仕掛けに充ち満ちているのだ。
 本作の狙い撃ちを狙い撃ちたらしめている要素の1つが点数だ。『ギャラクシアン』は、敵を撃墜した時の敵の状態ごとに点差が設定されている。飛来せずに上空で留まっている敵と飛来してきた敵とでは、飛来してきた敵のほうが高得点なのだ。また、自機が発射可能な弾は一度に1発だけ。弾を外せば上空で留まる敵に当たってしまうこともある。『ギャラクシアン』で高得点を狙うならば、飛来する敵を狙い撃ちするしかないのだ。
 逆に、上空で待機する敵を撃墜するのはとても簡単だ。ゲームをクリアするだけなら、狙いもそこそこにただ弾を撃っていればよい。けれども、それは本当に面白くない。まったくと言っていいほど興奮が得られないのだ。ほとんど動かない敵をただなぎ倒すなんて、つまらないにもほどがある。それゆえ、狙い撃ちの面白さが際立ち、自然と飛来する敵を狙い撃ちするだけになっていくのだ。上空で待機する敵を撃ってしまったら損などと思い始めたら、すっかり『ギャラクシアン』にハマっている証拠である。そうなったらあなたも居合い撃ちを始めよう。
 2つめの要素は、弧を描くように飛ぶ敵の動きそのものである。宇宙からやって来た某侵略者のように横へ横へと動き続けるのではなく、某星の兵士の敵のごとく殺る気まんまんで自機へ向かって一直線に突っ込んでくるわけでもない。デモ飛行で見せたように、1機1機が弧を描くように飛んでくるのだ。この弧が絶妙で、プレイヤーは敵が飛来してくる軌道を予測して「通り道に弾を置いておく」ような芸当ができてしまう。敵を撃つこと自体が芸当、つまりは芸になっているのだ。芸ゆえに成功後にはちょっとした優越感が湧き上がってくる。極めようとする意志も生まれてきてしまう。おそるべき弧の角度。ちょっと角度がついただけで、プレイヤーはすっかり狙い撃ちのとりこにされてしまうのだ。

複数同時飛来
 これまでに書いてきたとおり、『ギャラクシアン』は狙い撃ちすることにゲームを特化させている。狙い撃ちすることが目的であり、同時に手段でもある。ほぼ例外なく、このように目的と手段が高密度で同一化されたゲームは、中毒性が高いか、かなりの良作となっているのだ。私が愛してやまないファミコン版の『ダイハード』もやはり良作だった。敵の弾幕をかいくぐることが目的であり、同時に生き残るための手段になっていたのだ。もっとも、『ギャラクシアン』との弾数比が1対50くらいになっているけれども。
 さておき、『ギャラクシアン』での狙い撃ちへの追求は、デモ飛行を経て複数同時飛来へと進化する。複数同時飛来は阿弥陀如来に語感が似ているがまったく関係なく、単に複数の敵が同時に飛来してくる様を表現した言葉だ。単独で1機が飛来してくる時は単に狙い撃ちをするだけでよかった。しかし、複数の敵が同時に飛来してくるとそうは言っていられなくなる。そこに「複数の敵の軌道を読む」という要素が生まれてくるからだ。ただ、そこは狙い撃ちに特化した『ギャラクシアン』、単に飛来する敵を増やすようなことはしない。従来の敵とほぼ同時に、それとは別の軌道を持つ色違いの敵を飛ばしてくるのだ。4機のデモ飛行によって、最初に飛んでくる敵の軌道はプレイヤーの頭に叩き込まれている。よって、あとは新たに飛来してきた敵の軌道を把握するだけでよいのだ。
 当然、新たなる敵の軌道も弧を描く。従来の弧と新規の弧。この組み合わせにすることによって、デモ飛行でプレイヤーの脳裏に植えつけられた「無駄に動かなくても敵を倒せる」という記憶を残したまま、新たな敵も最小限の動きだけで対応することができるのだ。
 ギミックやシチュエーションを優先したため、もともとの操作が持っていた気持ちよさが制限されるゲームがある。『ギャラクシアン』の気持ちよさはあくまでも狙い撃ちである。見ず知らずの敵に翻弄されたり、対処することのみに振り回されるなんてことは一切ないのだ。

対決! 3機編隊
 狙い撃ちの面白さは、3機編隊との対決で頂点に達する。敵の旗艦と配下の2機からなる3機編隊は、飛来している間に3機を一気に撃墜しないとボーナス点がもらえない。また、軌道がそれまでの敵と異なるため、かなり引きつけてから撃たないと撃墜は困難だ。さらに、3機編隊以外の敵も飛来するから、「別の敵に対応しつつ、1発しか撃てない弾で3機を連続撃墜」という離れ業まで演じなければならない。
 だからこそ、撃墜時には特別な効果音が鳴り、さらにゲーム中での最高得点であるボーナス800点がわざわざ画面上に表示されるのだ。撃墜が困難だからこそ、それが成功した時の快感は比類なきものになるのである。
 ゲーム制作者のインタビューを読むと、ゲームを面白くするためのテクニックとして「抑圧と解放」をセットで用意する話がよく出てくる。この3機編隊と撃墜時の演出は、まさしく抑圧と解放そのもの。撃墜せずにはいられないのだ。
 実は、『ギャラクシアン』にはいくつものの「抑圧と解放」がある。1つは敵の動きそのものだ。飛来してきた敵を撃たずにいる(あるいは撃ち逃す)と、画面下へと消えていき、再び画面上空へと舞い戻る。画面上に存在するすべての敵が大なり小なり抑圧と解放を行っているのだ。
 また、デモ飛行~複数同時飛来~3機編隊~後で述べるラストバトルという流れも、長い目で見れば抑圧だろう。最後の抑圧から解放されると面クリアとなるからだ。
 まさに計算しつくされた抑圧と解放。アーケードゲーム時代、本作が大ヒットしたのはまさしく当然のことだったのだ。

そして、ラストバトルへ
 敵が残り少なくなると、敵飛来時の効果音が変化し、それと同時に敵の軌道も攻撃的なものに変化する。さらに、いったん上空へ舞い戻って停止していた敵が、そのまま間断なく襲いかかってくるのだ。しかも複数同時などといった生やさしいものではなく、生き残った敵すべてが同時に自機へ向かって突撃してくる。ゆるやかで見世物的でどこかしら牧歌的だった自機と敵との戦いが、一気に全面戦争へと突入するのだ。
 この時だけ、『ギャラクシアン』は『ギャラクシアン』ならではの完璧な調整をかなぐり捨て、普通のゲームとしてプレイヤーに勝負を挑んでくる。いわば、「面クリア直前の最終勝負」である。
「ここさえクリアすれば、また次の抑圧と解放が待っている」
 そのように思わせるための演出なのだ。
 かくして当時のプレイヤーたちは、すべてが狙い撃ちに特化した『ギャラクシアン』へとどっぷりとハマりこんでいったはずだ。そして、狙い撃ちの魅力は今も古びることなく、燦然と輝き続けているのである。

んで、居合い撃ちはどうなった?
 居合い撃ちにおいて、このラストバトルはこの上なく難しい箇所だった。敵の軌道が非常に読みにくく、居合い撃ちが極めて困難なのだ。ここで敵を撃ちそこね、あるいは敵に体当りされ、何度やりなおしたことだろう。けれども、最後に居合い撃ちで全滅させた時、私は大きな安堵とともにこうも思った。
「居合い撃ちという、狙い撃ちの極致に挑戦したからこそ、『ギャラクシアン』の世界を深く理解した」のだと。マニアックプレイをしたからこそわかることもあるのだ(そんなのおまえだけだよ)。
 ちなみに、この動画のギャラはなかったような記憶がある。この原稿料で取り戻したことを記載して、文章を終わることにしよう。


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チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~
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チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~ その7

目標は100本作ることとギネス掲載!

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―――カセットの最新作は『リバーシ』なんですが、これは何か理由があったんですか。
7:チョイコン版リバーシのCMを温泉で撮ろうという話があったんですが、忙しくて行けなかったんですよ。
―――それで作ったんですか!(爆笑)
7:だから代わりに何かできることないかなーと思って。
―――(笑い続けつつ)めっちゃいい話じゃないですか!
7:じゃあこれでも作っておくかーって。何とか温泉ロケに間に合うように8日くらいで作って。

リバーシタイトル


関:おまけに数独まで作ってたじゃないですか。(一同笑い)やればできるんだみたいな。
7:数独は前にちょっと勉強したことがあったので4日で作りました。
―――(笑い)駄目だおもしろすぎる。
関:一応ソフトを使って撮影したんですけど、そのシーン全部カットしました。
―――(大爆笑&大拍手)ひどい、それはひどくておもしろすぎる。すげぇ、最高だ。(息を整えて)……で、8日で作ったのは早いですねえ。せめて2ヶ月かけますよ。
7:思考ルーチンとか手抜きですからね。昔、携帯アプリでリバーシを作ったことがあったんですよ。そのへんを利用して。で、これは秘密で作ったので、画像データをもらっていないんですよ。それで、アプリ版を見ながら。
―――(笑い)それはすごい。

リバーシプレイ中
早い! 弱い! 曲なし! と三拍子そろった王道的なソフト。

7:場合によってはアプリ版の画面をデジカメで連写撮影して、それをPCに取り込んで拡大して、それを見ながら手打ちですよ。
―――(爆笑)まさに手作り。
7:アニメパターンもわからなかったので、それも全部撮影して。
関:CMでカットした部分ありますよ。見ますか?
(みなで『リバーシ』CMの没バージョンなどに見入る)
―――CMも大爆笑モンでしたね。最高ですよ! まあそれはさておき、最後に、チョイコンの目標をお願いします。
関:ファミコンで動くロムを100本作り、その記録でギネスに載ることですね。
―――期待してます! 本日はありがとうございました。

チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~ その6

■ゲームサイドとの出会い■

関:『忍者カイ』を作った後に、(隔月刊ゲーム雑誌の)「ゲームサイド」に話を持ち込んだんですよ。面識はまったくなかったんですが、いつか雑誌でチョイコンを取り上げてくれるかなと思っていたんですね。ただ、なかなか取り上げてくれなかったんですよ。チョイコンの数もそろってきていたから、それで普通に編集部へ電話をしたんですね、山本さんに代わってもらって(笑い)。門前払いされるとか、携帯だから(ダメ)とか思っていたんですが、ちゃんと対応してもらって。
―――ゲームサイドで私が連載していた「全てはファミコンのために。」とチョイコンのコラボ企画は、どちらから出てきたんですか?

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「全ファミ。」版パッケージ。裏側にはチョイコン名人の写真も載っているぞ!
もちろんバスガイドのお姉さんは出てこない。『シティーコネクション』クラリスのオマージュ!


関:自分からですね。何かやりたいですねって言うことを話して、キャラクター募集の企画をやりましょうと。ドット絵募集みたいなのとか。ステージエディットのゲームを作りたかったので、「コンテストみたいなのはどうですか?」という話をしたところ、やりましょうと。それからどんなゲームをつくろうかって考えたんですね。『バス太郎』に関しては作りたいからとかいうことではなくて、1本は固定画面のゲームとエディット画面がチョイコンのラインナップにあってもいいかなってのがあったんですね。で、『ナッツ&ミルク』がゲーム的に楽そうだなと。ジャンプしてこうとか、ちょこちょこと話はしてましたね。六本木ヒルズの下で話してたんですよ。
7:その時は(エディット面の)パスワード保存の話が出てたんですよ。
関:パスワードで携帯アプリ版とファミコン版とで連動させようと思ってたんですよ。
7:データが多すぎて、1面あたり何文字だっけ、100文字とか。
関:単純にパーツごとのパスワードになるので。
7:16×11あるので、176文字とかになるんですよ。
―――(爆笑)176文字! そりゃあすごいわ、かっこいい!
7:圧縮方法とかも考えていたんですが、さすがにきつくて。ちょっと無理かと。
関:圧縮のプログラムを作るのも大変だと。で、しょうがないと。できなくはないんですけれどね。
7:結局、ファミコン版だと保存できないんですよね。
―――元になった『ナッツ&ミルク』でもできないんでいいんじゃないですか。
7:まあそういうのにならって。1面を書き換える形で。
―――古のエディットモードっぽくていいですよね。

バス太郎エディットプレイ
エディット面。よく見ると支部長じゃないか!

関:あと、セレクトボタンで面を飛ばせる方式とか。
―――Aボタンでステージ開始画面も飛ばせるのもいいですよね。あれは2010年風っぽくて。
関:先へ行くのが大変だから。
7:本当はスタートボタンを押しての面セレクトがあったんですよ。ただ、面倒くさくて。
―――(笑い)じゃあセレクトで飛ばせばいいだろうと。
関:それは絶対やってくれとかいうアレもないんで。
―――(爆笑)そりゃそうですよね。
関:面倒くさそうだからああなったと(笑い)
7:ステージセレクトの画面を作ったりするのが面倒なんですよ。時間かければできるんですけれどね。
―――そうですよね。仕事やりつつ、手の空いているところでこれですもんね。『バス太郎』も「阿佐ヶ谷ロフトでのトークイベントに間に合うようにやってください!」と言ってやってもらいましたしね。
関:雑誌でプレゼントすると言って、結局1年くらいは待たせてしまいましたね。
7:申し訳なかったですけれどね。
―――『バス太郎』は何本くらいあるんですかね。
関:プレゼントで3個、関係者にちょこちょこっとですね。
―――そう考えると『カイ』なんかよりももっと少ないですよね。作りたくて作ったというのではなくて、元々がコラボ企画ですもんね。

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「全ファミ。」版カセット。通常版とラベルの絵が違う

7:田舎に帰ったときもずーっと作ってましたよ、お盆の間ずっと。お墓参りに行った後、作ったりとか。
―――(笑い)出た! 休みの日につくる話! いやあ、でも『バス太郎』は本当によくできてますよ。
7:バグもいっぱいありますけどね。
―――うはは、すぐわかるバグもありましたよね。でもそんなに違和感ないですよ。ファミコンっぽいなーと。ファミコンってあからさまなバグも普通にありましたからね。仕様かなってくらいの勢いで入っていたんで、特に問題もなく面白いなぁと。
7:ジャンプがなかなかうまくいかなくて。
―――壁際でジャンプしようとすると引っかかっちゃうじゃないですか。
関:最初、壁際でめりこんじゃうのが直らなくて大変だったんですよ。
7:チョイコンのフレーム数が10かな、ファミコンだと(『バス太郎』は30フレームなので)移動量や判定がすごく変わっちゃうんですよ。そこに問題があって。
―――でも遊んでいても違和感はないですね。
関:しいて言えば自分的には不満がありますね。チョイコン版は自機の挙動にあわせて面のバランス取っているので、ファミコン版だと意図しない攻略方法ができてしまったり。
7:画面の大きさも違うので。
関:まあ途中でいいよいいよと。しょうがないし、そろえる意味もないじゃんと。誰も違いがわからないし。
―――まあ比べられる人が日本に数人しかいませんからね。
関:違いがわかるのは、実際には自分だけでしょうね。

―――50面ごとに意味というかコンセプトはあるんですよね?
関:普通に作ってますよ。適当っぽく見えますけど。組み替えたりとか、流れで難しくしていこうとか。
―――あの手のゲームって、アイデアの使い回しが多いんですよ。このテクニックがまたここで出るんだ、とか。だから、アイデアの原資ってのがそんなに多くないんですよ。そういう使い回しが『バス太郎』にはあんまりなくて。
関:まあ時代が違いますからね。そういうゲームがあったからこそ、バリエーションをもっと出そうという意識で。
―――ゲーム理論の深まりというのもあると思うんですよね。だから多くの人に遊んでほしいと思うんですよ。
7:チョイコン版をぜひ。
―――(笑い)そうですね、チョイコン版をやってほしいですよね。
7:セーブもできますし。


サイパン(笑)で撮影された80年代風テレビCM的動画

その7につづく

チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~ その5

■10倍速くしてください■

――以前におはなしを伺った時、容量不足でラスボスが入らないとか言っていませんでしたっけ?
7:プログラム容量が足りなかったんですが、入れましたよ。マップの数も減らして、曲も1つ1ついらないのを減らして。
関:タイムアタックとか、曲のデータがすごいんですよ。
7:曲のデータだけで8kくらいあるんですよ。プログラムデータが32kのうちの。
―――(爆笑)そりゃすごい! めっちゃ食ってるじゃないですか! どんだけ豪華なんだ! 
7:曲がすごいですから。
―――(大爆笑)面白い! すごいすごい、4分の1が曲って! 
関:消せば減るんじゃないですかと。消したら入るっていうから、じゃあ消してくださいって。
―――(笑いが止まらず)いやあ面白い。で、『ナック』って完全移植に近いんですか?
関:いや違いますね。
7:自分の感覚でやったのをいれているので。
―――(敵を早く倒せば倒すほど敵が出やすくなる)敵の早回しはあるんですか? 
7:なってますよ。
関:だから象がずっと居るんです。
―――象しつこいですよね。あいつね、本当にしつこい。バルカンをとったりすると、硬くて倒せないとか。

電子艦隊ナック要塞
うわさの象。あわてて逃げると素早く追ってくる。ゆっくり逃げていってね!

7:バルカン取ったらひどいですよね。
関:連射じゃないバルカンとかありましたからね。
―――タイムアタックで取ると地獄なんですよね。めっちゃ楽しいんです。
7:(『ナック』のカセットを差し替えてプレイ)新しいバージョンではバルカンの威力をあげた記憶がありますね。
関:連射にしてもらったんですよ。最後の最後でバルカンを強くしてくださいとかお願いして。
7:レーザーも最初なかったので追加しましたね。
―――この間のゲームイベントで『ナック』のタイムアタックをやってたんですが、2分生き残った人が1人しかいなかったんですよ(笑い)。
7:でしょうねえ。
―――あれ、厳しいですよ。私も1分36秒まで頑張って。
7:敵のパターンを覚えれば簡単ですよ。
関:ワープのパターンが違うのかな。
(この後、チョイコン版とファミコン版のワープについての話が続く)
7:オーパーツを取れば、自動的にワープしてくれますよ。
関:そうでしたっけ。そこは……はっきり言って、ちゃんと指定していませんからね。
一同:(笑い)ひどいわー。
7:だから、日本で一番これをプレイしていますね。つくるために。
関:関:自分的には最後は……、あれ? というか指定の仕様が違ってますね。最後は自動で行くなんて、自分は言っていないので。(一同爆笑)
―――(笑い)それはひどい。
関:あの時は3本同時にチョイコンを作っていたから、『ナック』は最初に決めてあとは任せてたんですよ。

―――『ナック』ってコンセプトがク○ゲーって本当ですか。
関:それは本当ですね。(一同苦笑)5秒以内に死ぬようにしてくださいというのが一番言っていたことで。
―――(笑い)たしかに、2秒とかでやられる人もいましたからね。他人が見ていると楽しいんですけど、独りでやっているときついんですよ。
関:ちゃんと(プログラマーが)ゲームを作ろうとしたら、戻してもらいましたからね。(一同爆笑)簡単にしちゃうから、それじゃあちょっと……って話で。
―――難しくしてくださいっていいですね。面白いですねえ。
関:中途半端にしちゃうとダメですからね。『オルフェリア戦記』のセーブ消えるのもすごいみんなに反対されましたよ。でも絶対消すっつって。消えないと駄目じゃないですか、消えないとわからないでしょうと。
―――(ゲーム画面を見つつ)おお、ラスボスまで来ましたね。
関:ラスボスは最初っからあの宇宙生命体てのは決まってましたね。
―――(爆笑)
関:メトロイドを仮においてましたよ。
―――仮においてたって最高じゃないですか(笑い)
関:ク○ゲーって言えば『頭脳戦艦ガル』っての言うのがあって。当時つまんなさそうだったし、抱き合わせで売ってたじゃないですか。あれに関わらなくてよかったなって。
―――(爆笑)ひどい、私は買いましたよ!

電子艦隊ナックエジプト
『頭脳戦艦ガル』で見たことのあるようなないような敵がいないでもない。

横の作業場で仕事をしていた黒柳さん:当時の本でも『ガル』だけは面白くなさそうに感じましたね。最低でも3周はしないといけないとか。
関:で、電子艦隊は『ガル』っぽくしようかと。『ガル』のことを知らなかったので調べたんですけど、調べれば調べるほどやっぱりひどいという。ゴミ箱に捨ててる人とかもいて、そりゃそうだよと。
黒:まだ『ナック』のほうが親切だよなと(笑い)
関:それで、半端な難しさだったので、敵を10倍速くしてくれ、と。速くしてくれって言っても2倍にしかならないので、いいから10倍にしてくださいと。
―――(笑い)不自然に速いですもんね。
関:敵が見えなくてもいいからと。
―――面白い! このくらい突き抜けたほうがかえって面白いというバランスになってますよね。
関:本当につまらないものをやりたかったので。でも、いいバランスのつまんなさになって。人を引きつける何かを持つ。で、怒られたら困るから配信するケータイサイト購入画面の前に「本当にク○ゲーなんて買わないでください」的なことを書いたんですけど。
―――2分間モードのチャレンジダイブもすぐやられますからね。覚えない限りやられるという。これこれ、横から突っこんでくるコイツ、ほぼ対応不可能ですからね。

関:覚えるとけっこう行けますね。
―――ただ、これみんなでやるとすんごい盛り上がるんですよ。誰が生き残れるか、という感じでめっちゃ盛り上がりましたね。ああ、バルカン取っちゃった! というような面白さがありましたね。ひどいほうが楽しめるってのがありますよ。
関:ただ単にひどいってわけじゃないですからね。
―――そうなんですよ、覚えれば何とかなるという、絶妙なところぎりぎりなんですよ。
関:天然のダメさ加減のテイストが入ってるんですよね。
―――かゆいところに手が届かないんだけど、でも面白い。
関:純粋なク○ゲーの要素もあって。
―――絶妙なすごさがありますよ。絶妙なダメゲーなんですよね。
関:いつも言ってるんですけど、自分が悪い気がしちゃうんですよね。まるで自分がゲームヘタみたいな。このまま終わってしまったらただヘタなやつに思われてしまうみたいな、なので、もう一度やろうと思っちゃうそういう何かがありますね。
―――(79さんが隠しパネルを出したのをみて)おお、隠しパネルだ! あれは3000点ですか?
7:あれは4万3点ですね。携帯アプリ版は相当にやりましたからね。
関:なんでそうしたかは忘れました。
7:アプリで計算するとそうなるんですよ。仕様書にも書いてないんで。
関:だとすれば、バグでそうなっているのかもしれないですね。
関:黒柳さんも相当『ナック』をやってますよね。
黒:俺はソフトバンク版でやってるんですけど、ワープを取るとハングすることが多いんですよ。だからなるべくワープを取らずに。
―――(大爆笑)書けねー。
関:いや書いていいですよ。
―――(笑い)書くんですか、ここ!
関:ハングしないように遊ぶという、ちょっと洋ゲー的なもので。

その6へ続く

チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~ その4

■自分で面白いのを作ったほうがいい■

7:『電子艦隊ナック』も趣味ですね。09年のゴールデンウィークあけくらいに一回つくりはじめたんですよ。ゲーム大会の時に『ナック』も作りましょうよみたいな話をしていて、作れるかどうか調べてみたんですね。
関:『ナック』の仕様と画像データを渡しまして。『ナック』のプログラムソースがないので、続編と一緒に作ろうという話をしていましたね。ソースがなくても仕様があれば最初から作るということでしたので。最初、チョイコン制作では外注も使っていたので、ちゃんと仕様書を作っていたんですね。
―――『ナック』は裏モードになると通常のゲームスピードになるのって面白いですよね。
関:いや、なってないですよ。操作性がよくなるのとバランスが変わるだけで。本当は『チョイコン』版でそうするつもりだったんですが、時間がなくてやめたんですよ。

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関:(『ナック』を起動しつつ)そういえば、最初に動画を撮りましたよね。そしたら画面が映らなかったんですよね。お決まりのネタにできなかったという。
7:最初はわからなかったんですよ。基板のままいれちゃうとファミコンの奥まで入りすぎてしまって起動しなくて、後になってから浮かせるといいみたいな。
関:カセットの向きがあって逆に挿すとショートしちゃったかななんてこともありましたね。逆挿しも耐えられるんですけれどね。
7:基板にROMを逆挿しするとダメなんですよね。
関:電流が逆に流れてしまうんです。
7:(『ナック』には)わけのわからないバグがあるんですよ。いきなりやられてしまうやつ。で、左長押しとスタートボタンでコンティニュー。
関:『ナック』に関しては、79さんがひとりで密かに作っているんですよ。グラフィックも一人で。
7:ファミコン用の画像になっていないので、チョイコン版を見ながら作りましたね。
関:大きさもデカいですからね。チョイコンは最初16ドット×16ドットで作ったんですね。ただ、それだと携帯の画面だと小さくて、わざわざ作り直したんですよね。あと、ファミコンならではの4色をあんまり理解していないで、「ファミコンっぽく見えればいいや」という、雰囲気で作っていたのもありまして。

電子艦隊ナックタイトル
これぞファミコン的なタイトル画面。いや、ファミコンなんですけどね

7:実際にやってみると制限がたくさんありまして、例えばパレットは16×16の大きさが1つの単位で、それを敷き詰めていくんですが、一部だけ書き換えるのはかなり面倒なんですね。なので、最初はやはり苦労しました。
―――そのあたりは独学ですか?
7:いまはネットがありますから、ネットの情報を調べました。
関:意外と作っている人は多いんですよ。
7:おもてに出ないだけで。
関:ただ、その人たちってオリジナルじゃないんですよね。コピー品とか。だから、できなくはないんですよね。よくよく考えると。
7:試行錯誤しながら作りましたね。
―――『バス太郎』も苦労されてましたよね。
7:去年は忙しくて……。
関:仕事が忙しくなければ、もっと楽に作れていたと思うんですよ。
7:作っている間は寝るのが3~4時ですかね。
関:まあオンラインゲームをやっている時もだいたいそんなものですよね。作りたくて作っているわけですから。
―――(笑い)確かにそうですね。

その5に続く

チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~ その3

チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~ その1
チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~ その2

■完全に趣味で作ってます■

―――2本目が『ノってけ!バス太郎』ですかね。
7:いえ、その前に『チョイコン サウンドトラックVOL.1VOL.2』ですね。ファミコンにサントラがないから作りましょうということで。

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関:79さんが突然、曲を作り始めたんですよ。夢だったって言ってましたもん、思う存分曲を打ち込みたかったって。ファミリーベーシックじゃロクなもんが作れないからって。
―――(笑い)面白いですねえ。
関:ずっとCDのサントラを作ろうと思っていたんですよ。曲がすごくよいので。それで、どうせファミコンカセットを作るならサントラカセットを作ってしまおうと。
―――曲はすべて手打ちなんですね?
関:全部プログラムですね。
7:私自身がサウンドを以前にやっていたので。
関:あとは音担当のかたに音を減らしたのを作ってもらいましたね。音が多くて表現できなくて。『オルフェリア戦記V』はファミコンを超えるというか。
7:超えるというか無視していたというか。
―――(笑い)ダメじゃないですか! 8bit魂が売りなのに。

サントラ2

明らかにファミリーベーシックオマージュ。これですよこれ。

関:4音を超えるものをしぼってもらって。
7:自分で音を減らすのをやってもよかったんですが、やっぱり作った人にやってもらおうと。
関:再生時のループ機能がほしいねとか、4音あるから、画面のスピーカー部分に対応させようとか。
―――この機能は画期的ですよね! どこが鳴っているかわかるという。
7:ちなみに左上がチャンネル1でメロディ、右上がチャンネル2、左下がチャンネル3のベースで右下がノイズですね。(ここでサントラの曲を切り替える)これは、チャンネル1とチャンネル2でディレイ(遅れ)をかけているんですよ。
―――おおー、ディレイがどうなっているのか目でわかりますね。



7:(サントラの曲をおもむろに切り替えて)すすめ~すすめ~。
―――(爆笑)うはは、それですか! 
関:より『ボコスカウォーズ』っぽく。曲は、全部すごく気に入ってます。やはり曲をつくっている人がゲームばっかりやってるんで。
7:『ドラクエ9』で転生を10回するくらいですかね。
―――なるほど、ゲームをとことん好きで遊びこむ人なんですね。
関:でもファミコンが好きなんで。ちょうどそろったんですよね、79さんといい、やりたい人が集まりましたから。お金とかじゃなくて。
―――(笑い)まあそうでしょうねえ。あきらかに趣味で作ってるでしょうからね。
7:確かに、お金なんてまったくもらってないですからねえ。もう完全に趣味ですから。
―――出来上がったモノをもらえるだけという。

その4に続く

チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~ その2

関:ちょっとフレームレートが早くて操作中にすべるとか気になりましたけど、1作目ですからね。意外と面白いってやってくれている人がいるのですが、もっと突っ込んで作りたかったですね。
―――『カイ』で上のほうの雲が消えているのは、あれはリアルに消えているんですよね?
7:もちろんもちろん。
―――プログラム的にわざと消しているわけじゃないんですよね。
7:(ハード的に)消えちゃいます。市販のゲームだったら消えないようにちゃんとやるんでしょうけど。
―――私はあの現象を一見さんに説明するときに「ファミコンだから消えるんだよ」って言ってたんですが。
7:それもありますけどね。
関:そこまでやってもね……って感じですね。



―――(笑い)得点のカウンターストップまで遊んだことがないんですが、カンストしてもそのまま遊べるんですか?
7:距離はすぐにカンストすると思いますが、得点は正直わからないです。行けるとは思いますがチェックしていないので。
―――(笑い)そこまでやっている人はいないでしょう。
関:(ボタン連打で宙に浮ける)舞空術を使えばずっといけますよ。
―――いやぁ、そうですか? かなり難しいですよ。
関:会社のテスターのH君くらいだったら。あのくらいいける人が本気でやれば。
―――そんな人はほとんど日本にいないでしょう(笑い)あと、『カイ』に裏ワザを入れるようにしたのは最初からですか?
関:もともとチョイコン版に入ってましたからね。
―――裏ワザで出せるスタッフロールはチョイコン版にないですよね。
関:やっぱり作ったしるしに入れたかったですね。スタッフロールは当時なかったかもしれませんが、作ったことはアピールしたいですね、やっぱり。人目に触れなくても。
7:(エンディングを見ながら)本当は9999mまで行ったらエンディングにしちゃおうかということも話していたんですが、関さんがずっと遊びたいと。
関:エンドレスのほうがいいかなぁと。

7:それで、『カイ』が完成したのは2009年の年明けですね。
関:冬休みにちゃんとしたデータを作ったんですよ。慣れていなかったのもあって、タイトルも含めて全部描き直しでしたね。あ、そうそう、タイトル画面なんですが、「忍者」の部分にスプライトを重ねているんですよ。
―――へぇぇ、そうなんですか。
関:これはこだわりポイントなんですよ。タイトル画面が4色なので、「忍者」の下の黄色い文字の部分はBGとスプライトを重ねていて。
―――それは強調しないといけませんね!
関:ヤシの木もそうなんですよ。わざわざスプライトを重ねましたもん。

忍者カイタイトル
こだわりポイントのタイトル画面。かなり苦労されてるんですねえ

7:絵によってはキャラが消えてしまいますからね。レイアウトをずらしたりして調整しまして。
関:ファミコンはキャラが横並びでいくつまでって決まっているので。
―――そこまでやっているんですね。
関:意外とタイトル画面を出すのも難しくて。
―――(笑い)なるほど、セレクトボタンを押して2Pを選択すると、カーソルの横並びの部分が消えちゃうんですね。
7:「カイ」のバッテンのところもスプライト重ねてますね。
関:色が足りないんですよね。
(ここからしばらく『グラディウス』のビックバイパー話が続く)
―――ちなみに、『忍者カイ』は何本くらい作ったんですか?
関:一般の人には6本、関係者には6~7本ですね。あとは身内か。
―――10数本しかないということですね。
関:そう考えるとけっこう出まわってますね。あんまりもう価値がないですね。
―――でも、『ロックマン』の8本しかないプレゼント品が50数万とかするので、それを考えれば『カイ』も20万くらいしてもおかしくないと思いますよ。パッケージも説明書も作ってあるわけですからね。
7:いやいやまぁまぁ。作った期間は2ヵ月くらいですかね。
関:絵はそれほど長くないですね。大元をつくるのに2~3日で、修正をちょこちょこやったくらいで。
―――『カイ』を使ったイベントもありませんもんね。
関:身内でゲーム大会は月1くらいでやっていたんですよ。ずっとやろうと言っていたのに、あっという間に終わってしまって。
7:ずっとゲーム大会は出ていたんですが、ずっと銀メダルでしたね。(一同笑い)

忍者カイデモ
デモシーンもちゃんとあります。主人公の境遇を盛り上げるだけ盛り上げてフォローなしという、ファミコン的お約束がうれしい



その3に続く

チョイスゴコンピュータ開発者インタビュー ~ファミコンソフトを手作りしたツワモノ~

ファミコンで動く本物のファミコンソフトを遊びたい! そんな思いでファミコンカセットを実際に作ってしまっている方たちにインタビューをしてきました。(インタビュー:恋パラ支部長、インタビュー場所:六本木 ワンナップゲームズにて)

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インタビューに登場する方たち

関さん:携帯アプリのチョイコンシリーズをリリースし続けている開発会社ワンナップゲームズの社長さん。
79大好きさん:ファミコンで動くチョイコンソフトをいっぱい作った人。職業はヒミツ。
黒柳さん:チョイコンとレトロゲームを作りたくてワンナップゲームズで働き始めてしまった人。今回はちょっとだけ参加。

■チョイスゴコンピュータとは?■
ワンナップゲームズが開発する「新しい8bit風ゲーム」。ファミコンのゲームやその環境までもできる限り再現しまくった携帯用アプリゲーム。NTTドコモおよびソフトバンクモバイルでダウンロード可能。詳しくは「チョイコン」で検索!

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■普通に考えても逆に向けますよ■

―――カセットを作ろうと思ったきっかけは、『Mr.スプラッシュ』※1ですよね?
79大好きさん:そうですね。元々CS放送を観ていましたので、DVDを購入したら店舗限定で基板とROMが付いていました。さらにDVDにはプログラムのソースも入っていまして、それを見て自分で作ろうと思ったのがきっかけです。それで、中古ショップに行ってカセット制作に使うためのカセットを買いあさりましたね。
―――あはは、ベージュ色の某カセットですね。
関さん:イベントで配布されたあのROMは、「自分で作ってよいよ」という趣旨で配布されていたんですよね?
7:そうですね、実際に基板へハンダづけして作ってみましょう、ということで。
―――確かに、実際に『Mr.スプラッシュ』のカセットを作っている人に会った頃があります。それで、一発目に『忍者カイ』を作ることになったんですよね。
7:『カイ』より先に、実験としてあるカセットを作ったんですよ。ちょっとした落ちものパズルで。
―――制作はやはり苦労しましたか?
7:ROMとかかなり駄目にしましたよ。最初はカセットを作るためのマッパー(基板の種類)とかがまったくわからなかったので、マッパーが対応していないカセットを無駄に買ったりとか。最初、ROM自体の値段もわからなかったので、このROMは1つ500円くらいしましたからね。
―――それは高いですねえ。
7:だから初期投資額はかなりかかっちゃってますよ。数万レベルですかね。ROMをつけるための基板とか。ROMを焼きこむためのROMライターも買いましたし。
―――阿佐ヶ谷で私が開催したファミコンイベントで持ってきてもらってましたね。
7:ライターは4万くらいしてますね。あとはROMの中身を消すためのROMイレイサーや、ハンダごてと自動ハンダ吸い取り器。ROMやら基板やら諸々を合わせたら10万は超えてますね。

―――おお、初期投資としてはかなりかかってますね。それでカセットを本格的に作りはじめた。
7:チョイコンの中でどれができそうなのか調べました。それで出来そうだったのが『カイ』と『リバーシ』『ドキドキ大リーガー』の3本。ただ、『リバーシ』はデータをもらっていなくて、『大リーガー』はキャラが大きかったので難しい。で、『カイ』なら何とかできそうだなという感じで作り始めたんですよね。

関:最初はファミコンカセットを作りたいなという感じだったんですよ。『Mr.スプラッシュ』に特典でカセットがついているのを知って、「できるんじゃん! なんだ作れるんじゃん! 頑張れば作れる範囲なんだ」ってのがありましたね。

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カセットのみならず、パッケージや説明書まで作ってしまうノリのよさ。
ちなみに私のは限定版なのでゴールドカートリッジだ!


―――なるほど。『カイ』はシンプルなゲームですよね。
関:79さんには悪いのですが、『カイ』は元から大したゲームじゃないですからね。
―――うはは(笑)
関:安く作ると言いますか、チョイコンのゲームを改良しようと。元々はプレゼント用のただゲームを作ろうと思っていたんですね。だから安く流用で作ろうとしていたんですが、それだけだと能がないのと、絵を描くのも大変だということで、ドット絵が楽な『カイ』を選びまして。
―――(笑い)

忍者カイプレイ中
流れてくる雲に飛び移りながら延々と進み続ける

関:ゲームはどうでもよくて、あくまでファミコンにカセットを挿すところまでできればあとは知らんというか。ただ、もとのゲームはちょっとなんだかな…という部分があったので、遊べるように難易度の調整とかをしているんですね。それをベースにして作っているので、ベンチマークというか始まりです。
―――でもそのわりに『カイ』はけっこう遊べますよね。
関:それはやっぱり魂を込めてますから。
―――うはは、魂ですか。
関:二人用の殺し合いではちゃんと2P側が不利になる。
―――(爆笑)あれは対戦では必須ですよね!
7:あれはたまたまじゃないんですか?
関:たまたまじゃないですよ、2Pは不利にしましょうって言ったじゃないですか。普通に考えても逆に向けますよ。
―――普通ですか(笑い)あえて不利になっているんですよね。『ポパイの英語あそび』からそれですよ。ブルートは絶対不利という。
関:あと、連打する場所を用意しとかないと。
―――(笑い)確かにお約束にあふれてますよね。

忍者カイ2Pスタート
自分の向いている方向に手裏剣を撃つことができるのだが、ゲーム開始直後、2Pはそっぽを向いている。

忍者カイ2Pスタート後
そのため、ゲームスタート後から一方的に2P側を攻撃することができてしまう。この仕様を駆使して初心者を屠りまくった大人げないチョイコン名人が私だ。

―――
その2に続く
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